どっちが感動? 紙VS電子

以前の記事「紙書籍VS電子書籍」や「どっちが視力低下? 紙VS電子」に続き、どちらの外観が感動するかを紙書籍VS電子書籍で比較してみます。
 
先に結果を申し上げておきますと、紙書籍の方が見た目の感動ポイントは多いです。
もちろん筆者の個人的な価値観ですし、今回の記事の対象をマンガとしている点も影響があるかもしれません。
なぜマンガを対象としているかは、マンガは絵が必要不可欠な書物のため視覚効果が高く、比較がしやすいからです。
もちろん筆者がマンガばかり読んでいる点は否めませんけどね。
 
 

紙書籍の有利点

特殊印刷
掲載画像:小山宙哉『宇宙兄弟(28)』(講談社)
出典:honto
 
見る角度によってキラキラするラメ効果や、箔押し、紙の凹凸による立体感・触感など、印刷物でしか実現できない表現があります。
この『宇宙兄弟』も特殊印刷でキラキラが施されています。
このキラキラの1~2割くらいは星の形をしています。
特に28巻はこれまでの巻に比べ、表紙全体の色が暗いのでキラキラが本当によく目立つんです。
宇宙のワクワクを感じますよね。
 
ちなみに同じ28巻の電子書籍の表紙はこちら。
出典:amazon.co.jp
 
やはり見た目の感動は紙書籍の方がありますよね。
(掲載画像では伝わりにくいので、ぜひ紙書籍の実物を見てみてください)
見開きのインパクト
スラムダンク1巻
掲載画像:井上雄彦『スラムダンク(1)』(集英社)
例えばこのような見開きを使ったコマ割り、よく見かけますよね。
見開き両ページに1コマがまたがるレイアウトです。
 
電子書籍を読む際、多くの人はタブレットを使用すると思います。
そしてほとんどの人がタブレットを縦向きにして読書をします。
この場合、1ページずつの表示になりますので、見開きで構成されたレイアウトは伝達性に欠けてしまいます。
こちらの画像のようなページを1ページずつ表示すると、一瞬ストーリーに違和感を覚えるはずです。
 
スラムダンク31巻
掲載画像:井上雄彦『スラムダンク(31)』(集英社)
感動のワンシーン!
(T o T)b
と、勝手に熱くなりましたが、このような見開きを使用した1カットのインパクトも電子書籍だと半減してしまいます。
紙書籍の場合、ストーリーが盛り上がり、読者は興奮し、次のページをめくってこの見開きを見た瞬間、
「おおおおーーーーーーっっっっ!!!」
と、感動の涙となるわけですが・・・
 
もし、電子書籍で1ページずつ見た場合は以下のようになるはず。
 
(まず右ページ表示)
「?」
 
(タップして次ページ表示)
「!」
「あー(なるほど、見開きね)」
「おおおーーーー!」
 
とね。
まったくもって感覚的な表現で恐縮ですが、感動までに一瞬の間ができるのは確実ですね。
 
 

電子書籍の有利点

表示が大きくて読みやすい

ほとんどの電子書籍はタブレットの画面サイズに合わせて表示されるので、紙書籍のサイズより大きく表示されるものもあります。
これは老眼が入ってきた当社の代表にとっては嬉しいポイントだそうです(笑)
タブレットがコンパクトサイズのものであっても、電子書籍は拡大表示できる点がメリットでもありますね。
でもこの場合スライドするのが面倒だそうです・・・
 
感動ポイントではないですね(笑)
 
 

電子書籍の本質

見た目の感動・インパクトページをめくる読みごたえ実物のある充実感・・・
以上は紙書籍のメリットです。
紙書籍の付加価値ともいえます。
 
これら付加価値のない電子書籍を好む読者は、「ストーリーのみで満足」するタイプが多いのかもしれません。
もちろん読者はストーリーを把握するために書籍代を支払うので、ストーリーの面白さは紙書籍・電子書籍どちらについても大前提の要素ではあります。
ですが「ストーリーのみで満足」と考えるなら、安価で、物理的スペースが不要で、何百冊と持ち歩ける電子書籍に強いメリットを感じるのは確かです。
 
説明が難しいですが、紙書籍は装丁や紙のサイズ・種類、ページをめくる行為までも含めて一冊の本であり作品です。
紙書籍VS電子書籍で「好きなものなら紙書籍を持つべし」と説いた理由の一つでもあります。
しかし、電子書籍は画像の集合体であって、読者が楽しむポイントはストーリーのみ。
電子書籍の方が純粋なストーリー勝負といえるのかもしれませんね。
 
ちなみに本記事でご紹介した『スラムダンク』の井上雄彦先生、『20世紀少年』で有名な浦沢直樹先生など、電子書籍化に賛同していない作家さんもいらっしゃいます。
理由は「紙で読まれることを前提とした作品だから」だそうです。
クリエイターにとってこういうこだわりは大事です。
井上雄彦先生、浦沢直樹先生どちらもリスペクトです!
 
 

今後の予想

見開きを利用した構成

現在は大手出版社で有名どこの作家さんならほとんど紙書籍・電子書籍どちらの出版も許諾する契約になっていますので、今後、電子書籍のことを考慮して見開きにまたがるレイアウトは少なくなるかもしれません。
見開きのカットが名場面として残る作品も多くあるので、そこに制限がついてしまうとちょっとさみしいですね。

特殊印刷

紙書籍でしか表現できない特殊加工は今後多くなるかもしれません。
単価の問題もあるので一概にそうとはいえませんが、紙書籍と電子書籍の差別化が進み、電子書籍はどんどん価格競争に巻き込まれていくことが予想されます。
一方の紙書籍は特殊加工など付加価値をプラスして、読者に特別感を与える位置付けとなるでしょう。
 
 

補足

この記事のとおり、見た目の感動ポイントが多いのは紙書籍と考えておりますが、これはほとんどの作品が紙で出版されることを前提に作られているからです。
電子書籍用に作られた作品であれば、電子書籍での表現・見た目が有利となるでしょう。
(例えば動画や音声を埋め込むのは電子書籍ならではの表現ですし)
いろいろな表現手法で読書の楽しみ方が増えるとよいですね。

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